<第3話>

ブリキのおもちゃ好きに多いパターンに大正/昭和の古い柱時計・昭和初期のベークライトのラジオ・国産ネジ巻き腕時計・レトロなデザインがいかした扇風機・戦後の邦画ポスター・けったいなホーロー看板等々なんでも好きやね・・僕も日本製の古いものは一通り興味を持ちました

まぁ要は人から見たらガラクタ、自分では宝物や思ってんやけどね(悲)

それである程度のコレクションが溜まってきても「北原氏」の本とか見てるとこんなんいったいどこで手に入れるんやろ?みたいなおもちゃがわんさと載ってるもんで
どうしても一度アメリカのトイショーに行って見たいという思いが募って来たんです
海外からおもちゃカタログ取り寄せて買うだけでは満足できなくなって「ブリキ病患者」の行き着く先は海外買い付けやねん、病膏肓に入るというやつやね
その当時日本のディーラーは(2、3年前から)皆アメリカへ仕入れに行ってましたね

当時日本から大量のブリキのおもちゃがアメリカやヨーロッパへ渡っているんです、昔の日本は自動車産業華やかなりしのずっと前(どうも今自動車業界調子悪いみたいやが)
玩具の輸出で外貨を稼いでいたのです(日本製のはずなのになぜかパッケージがやけに興味をそそる英語なのも輸出が主目的だったからなのね)

そしてついに1988年の秋にアメ村のおもちゃショップ・アンティークマイコの店主、藤井氏と西海岸のヘイワードという町のショーに行ったんです
今ではン百回と世界中のトイショーをまわってはる藤井氏ですが(日本人ディーラーでは最多)この時点ではアメリカ行きは新婚旅行のロスに次ぐ2回目とか?
ほんでわたしは初めての海外、なんとも頼んない2人の珍道中の始まりです

藤井さんが機内食はチキンかビーフか選ぶんやでって先輩風吹かして言うから・・うとうとしてたらあっ来たで来たでワゴンで食事が・・筋肉質の青い目のスッチーが
アメリカでは日本と違い客室乗務員は体力勝負の労働者ってイメージやね、あわてて「ビーフ!」ゆうたら運んで来たんは・・あれ?ジュースやったのね(恥)

まずはサンフランシスコ着で(時差ボケでえらい眠いんやけど)タクシーで「ラマダルネッサンス!プリーズ」と.ひとまずホテルまで
黒人の運転手かっこええなぁ〜これがアメリカか!(黒人といえばアメリカ村にも仰山おるけどなんかこっちの連中のほうが垢抜けとるなぁ)
しかしこの陽気なミュージシャンみたいなおっさんぐんぐん飛ばす飛ばす、あのーちょっとおたくスピード出しすぎで怖いんやけど(はよう言わんかったが)

ホテルチェックイン後またタクシーでまずはフリーマーケットへ(フリマ行くのにタクシーとはなんと贅沢な?)
ところが到着が夕方になってしまったのでかなり閉店間近であんまり見れず、とりあえずホットドックを食べることに、しかしこのドックがでかくてめちゃマズイのなんの 
パンもパサパサやしソーセージも油がまわってんのか戻しそうになったわ!繊細な僕(疑)は少しショックを受ける
NYではこれの早く食いまでやってるんやろ? アンビリーバボーやわ

翌日少し時間があったので一人でサンフランシスコのデパートを覗いて見ることに、各フロアーを冷やかしにうろうろしてると若い美人の店員さんがハロー・ハローと僕みたいな
場違いなモンにも笑顔で声をかけてくる、それもなんやこの人旅行者ね!みたいな扱いではなく全く旧知の間柄みたいにフレンドリーで自然に声をかけてくる
国民性の違いは凄いですうん気に入った!しかしアメリカのデパートかなり商品ダサイな、それに比べて日本のデパートはやっぱり凄い(おいどっちやねん)

次の日トイディーラーのレイ・ローさんがレンタカーにて迎えに来てくれてその日はトイショー会場近くのモーテルに移動
昼食はピザで夜食はパンケーキ専門店へ、前日のホットドックに恐れをなしていた僕はピザもパンケーキ専門店にも腰が引けた疑惑の視線?
ところがこれが旨いのなんの日本にない味、ピザもパンケーキもなんでこんなに旨いん? じゃぁ昨日のドックあれなんやったん?
とにかく美味い・マズイ,かっこいい・ダサイが両極端やねアメリカは

(まぁ食いもんの話しはそのへんで置いといてモーテルに数名のディーラーが集まって来ます、バンダナ巻いたヒッピーがハーレーに乗ってきたで凄いなぁ・・なんて思いながら就寝)

翌日は早朝からレイさんと行列に加わりアーリータイム(早朝入場)のパスを買ってワクワクしながら小1時間開場を待つ・・結構たくさんの人が並び始める
そして入場(うんパチンコ屋の新装開店よろしく)そ〜れ行けとばかりに面白いものを早く安くGETするぞと張り切って小走りで会場内をウロウロ・・
20〜30分探すがこれと言ったものが何も無いあせって来たウ〜ンブリキ求めて何千里やでこっちは、ホントなんか買わないと、どうしよう〜

と.あるブースに目が止まる・・で出た〜あった〜ヨネザワの40cmのブリキのオートバイ!これや噂の「I.Yメタル」のハーレーや(コンドルのでっかいの・・ちょっと専門用語でスマン)
ヨコハマのおもちゃ博物館の北原さんもアメリカのコレクターの写真でしか見たことがないよ知ってる?と言ってはったやつや!
(あっでもコレ今ではそんなに珍しく無いんよ30万位です・・しかし当時は大変な貴少品でそんなのがあるらしいと・・)

ちょっと震えて来たぜ、ゾクゾクっとね2000ドル位かなぁ?勝手に妄想が膨らんできたわ、アミの付いた木のケースに入れよったで(盗難防止やな)なんぼやろ?
ハウマッチイズイッ? あらこのおっさんどっかで見たで?あっそや昨夜モーテルへハーレーで乗りつけて来たヒッピーや、へーこの人出店者やったんや
それでバイク全般のコレクターなんやきっと出品物のおもちゃもバイク系多いし納得

あれま紙切れに値段書き始めたで藤井さんに見つからんうちに先に買うてしもたろ・・うわ〜げっ!ろ・ろ・ろくせんどる〜こらあかん・・80万円強や沈没や
若かりし頃カワサキの中古のナナハン乗ってたが28万円やったんです、はっきり覚えてるけど3台買えるがな!
こらあかんさっそく藤井さん探して報告や・・彼もハーレー前にしてうなったままや500ドルしか値引きに応じないわ強気やなこのヒッピー、とにかく諦めるしかないね残念!
(後日談ですが翌年再度藤井さんが渡米しはって5000ドルで購入しある四国の大金持ちのコレクターに100万で売らはりましたメデタシメデタシ)

その後レイさんにあちこちアンティークモールへ案内してもらい最後は国内線でレイさんの自宅のあるシアトルへ
シアトルは日本でいえば神戸のような前が海・後が山の素敵な町です、海の幸が豊富でアメリカ人がリタイア後に一番住みたい町なんだそうです

レイさんは日本人好みのおもちゃをよく勉強していて僕や藤井さんが唸ってしまうようなメイドインジャパンのおもちゃを沢山ストックしていました
今回の旅費の足しにと思い商売用にボンネットバスや他数点のブリキを購入しました
しかしその時点で既に僕はアメリカのレンタカーシートのけったいな匂いと時差ボケにすっかり体調を壊しレイの家で寝込んでしまうはめに
レイがインスタントヌードルにびっくりする程レモンをしぼりこれ食ったら大丈夫とばかりに僕に勧めます
ベッドにグロッキーになりながら大統領選挙の結果をTVがわめいているのが耳に入ります
大統領は誰に決まった?って聞きますとブッシュ!とレイ(先般退任したブッシュの親父)どうせならこの間のオバマの当選に出合わせたかったで・・
そしてレイ特製のスーパーサワーヌードルのおかげで急に体調回復やれやれや!

そして2日後2人とも少し欲求不満のまま帰国の途についたのでした、まぁ比較的小さな規模のトーイショーでしたが本場の空気を吸ってとても満足やったかな
アメリカは建国200年程度やから日本でいう歴史的な骨董品とか美術品とか云う概念はあまり無いと思います
ついこの間のモノが既にポップなアンティークです、わずか20〜30年程前の玩具にもそれなりの価値を見出したり
その他玩具以外にもさまざまなアイテムの販売のショーが週末全米各地であります
アメリカにいれば「何かを収集する」と言う趣味に於いてはジャンルは無限や思います、羨ましい限りです!

(出発のとき伊丹空港まで見送りに来て下さったいつも明るかった藤井さんの奥様〜8年後の大地震により天国に召されました、今ごろどうなさっておられるやら・・)

大阪トーイショウ主宰    萩の屋
(おわり)
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